設備保全
2026.9.29
記録を残しはじめただけでは、属人化は解消しません。書き方が人によって違えば、記録はあっても、書いた本人にしか意味が分からないからです。この記事では、設備保全の属人化を解消する手順を4つに整理して解説します。
※ 特に見落とされやすいのが手順2です
この記事の目次
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設備が止まったのに、直せる人が一人しかいない。その人が休みなら、ほかに分かる人はいません。結局、休んでいる担当者に電話をかけることになります。
「休みのところ悪いんだけど、あの設備が止まって……」。かける側は気が引けますし、受ける側は休みが台無しです。それでもラインが止まっている以上、かけるしかありません。

保全の現場では、よくある話ではないでしょうか。
先日お話を伺った金属加工メーカー様の設備部門でも、困りごととして挙がったのは「部品を探し回る」「担当者でないと分からない」「棚卸しが大変」の3つでした。特に安い部品ほど管理が手薄になり、探すのに時間ばかり取られているそうです。
こうして頼られている担当者は、休みも取りにくく、異動もしにくくなります。教育担当に回ることも、別の改善に時間を使うこともできず、仕事がその人に集まり続けます。
これが属人化です。ベテランが辞めるかどうかとは関係なく、いま現場で起きている問題です。
この記事では、今の業務が特定の人に頼りきりになっている状況を、どう解消するかを扱います。ベテランの退職を見据えた技能継承については、別の記事にまとめています。
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ベテランが情報を抱え込んでいるわけではありません。聞けば答えてくれますし、頼めば教えてくれます。ただ、修理が終われば次の修理が待っていて、聞かれてもいないことまで記録に書く時間が取れないのです。
このことは、国の調査からも読み取れます。『2026年版ものづくり白書』に載っている、ベテランのノウハウ見える化や技能継承の課題を尋ねた調査では、次の回答が上位に挙がっています。
出典:経済産業省・厚生労働省・文部科学省『2026年版ものづくり白書』(2026年5月公表)
7割近くが「形式知化が難しい」と答え、「方法やツールが分からない」「時間や人手が足りない」もそれぞれ3割近くあります。やる気がないのではなく、やり方と時間がないのです。
同じ調査には、もう一つ気になる結果があります。製造業のデータ活用を分野ごとに見ると、「データを取っている」「活用している」「効果が出ている」と答えた企業の割合が、どれも一番低かったのが「ベテランなどのノウハウ見える化」でした。生産計画や在庫管理ではデータ活用が進み、効果も出ているなかで、ノウハウの見える化が一番遅れています。
逆に言えば、ここに手を付けるだけで、同業他社より一歩先に進めます。
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属人化には2種類あります。記録そのものがない場合と、記録はあっても書いた本人にしか意味が分からない場合です。
多くの会社は記録を残すところまでは進めますが、2つめにはなかなか気づけません。紙やExcelに残していても、書き方が人によって違えば、ほかの人は読んでも使えず、集計もできないのです。記録を残すだけで終わらせず、書き方まで決めておくことが大切です。
そこで、次の4つの手順で進めます。
まず、「あの人しか分からない」ことを書き出します。保全業務の属人化は、大きく4つに分けられます。
このうち判断の基準は一番難しいので、後回しにしましょう。設備と部品の情報は、手間はかかっても、書き出せば確実に形になります。手をつけられるところから始めるのが近道です。
全設備を一度に対象にする必要もありません。止まると生産への影響が大きく、しかも直せる人が一人しかいない設備から着手すれば十分です。
すでにExcelで設備台帳や部品リスト、過去の修理履歴を残しているなら、それを洗い出しの土台にすれば、ゼロから書き起こさずに済みます。
現場に記録をお願いする前に、どう書くかを決めておきます。自由記述のまま始めると、本人にしか分からない記録が増えていきます。
ある住宅メーカー様の生産部門では、入力する人によって書き方がバラバラで、データ分析ができないという悩みがありました。たとえば、修理記録に「配線直し」とだけ書かれたものがありました。
断線した配線を交換したのでしょうか。それとも、外れていた配線をつなぎ直しただけでしょうか。書いた本人には分かっても、後から読む人には分かりません。部品を発注すべきかどうかも、次に同じ症状が出たときにどう対応すればいいかも、この記録からは判断できません。
同じ現場からは、「入力の段階で『具体的にどう直したのか』を問いかけてくれる仕組みがほしい」という声も出ていました。現場も、記録の量より書き方に問題があると感じているのです。
部品の呼び方でも、同じことが起きます。同じ部品を、ある人は「ベアリング」と書き、別の人は「軸受」と書く。現場では通じていても、検索すると別のものとして扱われます。これでは、記録があっても使えません。先ほどの金属加工メーカー様からも、人によって呼び方が違っても統一して登録・集計できるのか、という質問が出ました。

対策は、書き方を選択式にすることです。あらかじめ用意した選択肢から選ぶ形にすれば、誰が入力しても同じ言葉で残ります。文字を打たずに済むので、入力の手間も減ります。
書き方を決めるときは、次の3点を押さえます。
選択肢は、細かすぎても粗すぎても使いにくくなります。たとえば「モーター不良」だけでは粗すぎて、原因が分かりません。一方で、「ベアリング摩耗(負荷側)」のように部位まで分けるかどうかは、現場によって判断が分かれます。そこまで記録する現場もあれば、分けない現場もあります。迷ったときは、「この違いを後から集計したいか」で決めるとぶれません。
社内ですでに使っている分類があれば、それに合わせると現場になじみやすくなります。
書き方が決まったら、次は目当ての部品や設備を探せるようにします。
見落とされがちなのは、新しく担当になった人は、部品や設備の名前がそもそも分からないということです。「あの部品」と言われても、正式な名前が出てきません。これでは検索もできず、ベテランに聞くしかないので、属人化が続きます。
先日お話を伺った食品メーカー様の保全部門でも、名前が分からない部品はどうやって探せばいいのか、という質問がありました。実際に、新人がどの部品のことか見つけられない場面があるそうです。
名前以外の手がかりからたどれるようにしておけば、新しく担当になった人でも自分で探せます。

これは新しく担当になった人に限らず、他部署からの応援者や協力会社の人も使える仕組みです。そして何より、担当者が休日に呼び出されずに済むようになります。
最後は、貯まった記録を使えるようにします。
ここで手順2が効いてきます。書き方がそろっていれば集計ができ、集計ができれば、どの設備にどんな故障が多いかが見えてきます。
最近は、AIに聞いて過去の記録を探すこともできるようになりました。ただし、ここでも手順2が前提です。「異音あり」とだけ書かれた記録が100件あっても、AIは役に立つ答えを返せません。反対に、書き方のそろった記録が貯まっていれば、「このモーターから異音がする」と聞くだけで、過去の似た事例と対応内容が返ってきます。ベテランに聞かなければ分からなかったことを、誰でも調べられるようになります。
先ほどの食品メーカー様は、「効果をデータで確かめ、誰が手がけても同じ結果が得られる運用」を経営方針に掲げています。属人化をなくすことは、現場が楽になるうえ、こうした経営方針にもそのままつながります。
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ここまでの4つの手順は、紙やExcelでも進められます。ただ、手順2の「記録の書き方を先に決める」と手順3の「部品名・設備名が分からなくても探せるようにする」は、システムを使ったほうがずっと楽です。
設備保全システムを比較検討されるなら、機能の一覧に加えて、入力画面を実際に見せてもらうのがおすすめです。デモでは、次の3点を確認しましょう。
特に大事なのは3つめです。「何でも書ける」は便利に見えて、記録がバラバラになる原因になります。
できれば、実際に現場で使う方にも触ってもらうと確実です。管理者が見て分かりやすい画面と、現場が使い続けられる画面は、同じとは限りません。
注意「項目を削れる」はメリットとは限りません
もう一つ気をつけたいのが、「項目を現場に合わせて削れる」ことを売りにしているシステムです。現場で不要と言われた項目を消せれば、導入しやすく、記録の手間も減るように見えます。ただ、数年後に故障の傾向を振り返ったり、止めないための手を打とうとしたりしたとき、必要な項目が記録されていなかった、ということになりかねません。入力を楽にする工夫と、項目そのものを減らすことは別の話です。デモでは入力のしやすさとあわせて、後から振り返るのに必要な項目が残る設計になっているかも見ておきましょう。
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ミロクルカルテでは、手順2〜4を次のように支えています。
「項目は固定なのか」ともよく聞かれます。御社独自の項目は追加できますが、業務改善や故障の予防に必要な項目は、基本項目として消せないようにしています。現場の声に合わせて削れるようにすれば、導入の最初は楽になります。それでも消せない設計にしているのは、数年後に後任の担当者が記録を振り返ったとき、必要な項目が抜けていては改善につながらないからです。
そのかわり、入力の手間は設計で減らしています。起票の段階で入力する項目は最小限にとどめ、作業が進んだ段階で、選択式の項目を使って内容をそろえる形です。
「AIの補正はどのくらい正確なのか」という質問をよくいただきます。簡単な説明でも、必要な項目はほぼ埋まります。たとえば、次のように話すだけです。
説明が足りなければ、どこを補えばよいかをAIが聞き返します。実際にお使いのお客様からも、入力が楽になったとご好評をいただいています。
分析画面を先に開発してお客様に提供するほうが、導入を決めるお客様には価値が伝わりやすいのは確かです。
それでも私たちが記録の入力を助ける機能を先行して作ってきたのは、分析機能は後からでも追加できる一方で、現場で必要な記録がしっかり残らず、残した記録も活用できない「役に立たない」と思われたシステムは、二度と使ってもらえず、現場に定着しなくなってしまうからです。
ある大手自動車部品メーカー様の保全担当の方からも、入力の質から始めるという考え方に「我々もまさにそう思っている」という声をいただきました。
属人化の解消も同じ順番です。まず記録の書き方を決める。そのうえで記録を残す。記録を実際に活用できるようになるのは、その後です。
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設備保全の属人化を解消する手順を、4つに整理しました。
最も見落とされやすいのは、2番目の手順です。記録を残すところまでは多くの会社が取り組みますが、記録の残し方や書き方を決めないまま始めてしまうと、せっかく残した記録を活用できなくなってしまいます。
担当者が休みの日でも、ほかの人が過去の記録を見て対応できる。新しく担当になった人が、名前の分からない部品を自分で探せる。まずはここを目指しましょう。
もし御社の現場でも「あの人しか分からない」ことに心当たりがあれば、ぜひ一度、ミロクルカルテの入力画面をご覧ください。
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